少し暑さが和らいで、お彼岸の季節が近くなる頃
美しく咲き乱れる彼岸花
お墓参りに行ったおばあちゃんの田舎で、
ふと触ってみようとして、
「ソレは触っちゃいけん!曼珠沙華(まんじゅしゃげ)は、毒もっとうから!!」
「彼岸花は不吉っちゆうて、あんまりええもんでなかと…」
なんて、子どものころに言われたことありませんでしたか?
こんなにキレイなのに毒あるの?
危ないものが、なんでこんなに身近にたくさん咲いてるの?「ヒガンバナ」?「マンジュシャゲ」?名前が違う、似た花?
そんな疑問を持ったことあるひと、多いのではないでしょうか。
多くの別名を持つ彼岸花。
彼岸花が不吉と呼ばれるワケ。
不吉と言われると敬遠しなきゃいけないような気がするけれど……チョット待って。
その意味を知ってみると、
本当はそうじゃないかも?しれません…
スポンサーリンク
なぜ彼岸花は不吉というイメージがある?
遥か昔、
まだ死者の遺体をそのまま土葬していた時代。
その埋めた場所へ、『土葬者の墓標』として植えたのが彼岸花なんです。
彼岸花は全草有毒で、特に根の部分に毒を多く含む植物。
遺体を食料として好むモグラなどの動物に掘り返されないよう、根に毒のある彼岸花を土葬した上へ植えたんですね。
「彼岸花は不吉」という迷信の一例で、よく言われるのが『彼岸花を摘んだら死人が出る』というもの。
そりゃそうです。
土葬した上に咲いている彼岸花、ソレを引っこ抜いたら、
「ご遺体がこんにちは!」しちゃうこと、あるかもしれませんよね(笑)
また、その花の名のとおり「お彼岸の頃に咲く」ことも、「お墓参りをする時期にいつも見る花」…として、
死者と結びつくイメージのひとつとなっているのかも。
きちんと理由があって植えられていた彼岸花ですけれど、お墓、遺体、というイメージが先行してしまって、
『不吉な花』と呼ばれるようになってしまったんでしょうね。
彼岸花には毒があるの?
これも彼岸花の迷信でよく言われることがある、『摘んだら手が腐る』というもの。
実際わたしもおばあちゃんに言われました。
「手がかぶれるけん、触っちゃイカン!」
はい。毒があるという彼岸花、
これはイメージだけの話ではなく本当です。
手が腐るは少々言い過ぎかもしれませんが、彼岸花には「アルカロイド」という毒素が含まれています。
万が一誤食してしまうと、
中枢神経の麻痺、吐き気、下痢などの症状を引き起こすもの。
根の部分がとくに毒性が強いですが、全草有毒の植物なので、摘んだ彼岸花を持っているだけでも、けして無害とは言えないんですね。
しかし過去、食糧難の時代にはこの毒を持つ彼岸花を食用としていたこともあります。
有毒な植物なんですがその一方で、
鱗茎(りんけい)には良質なデンプンも含まれているため、「水晒し(みずさらし)」という技法を持ってしっかり毒を抜いてしまえば食べることが可能。
数日間かけて水に十分晒した彼岸花のデンプンは、乾燥させると、くず粉や片栗粉、コーンスターチなどと同じように食用できるようになります。
毒もあるけれど、貴重な食料ともなって人を救ってきた彼岸花。
そう考えると、
有毒だからと忌み嫌うだけじゃない、違う眺め方ができるかもしれませんよね。
スポンサーリンク
危険なのにたくさん植えられている理由は?
とくに彼岸花は一本だけで咲いているものは少なく、田舎道で見かけるときには、
目を見張るほどたくさんの赤い花が咲き乱れている様子が多いですよね。
植えられている場所は田んぼの近くや土手、あぜ道などがよく目に付くと思います。
これ、きちんとワケがあって、やはりこれも
モグラやネズミなどの動物たちが、田んぼ付近の土手などに穴を開けてしまうのを、彼岸花の根の毒性の力を借りて防ぐためなんです。
あと、もうひとつ!
ずっと昔のこと、食料が足りず飢饉(ききん)になることがあった時代。
草や木、ワラまでも食べ尽くしてしまったのち最後の非常食として、
彼岸花の球根を毒抜きして食べたという説があります。
非常食として彼岸花を植えておく必要があったため、普段食べられては困ってしまう…。
そう考えると、「彼岸花には毒がある」
と伝え、人が寄り付かないようにしておく必要があっただろうし、だけども餓死から身を守る命綱だから、身近に植えておくことも重要だったのでしょうね。
彼岸花の不吉な異名の数々!
実は私自身、大人になって自分で調べてみるまで
「彼岸花」と「曼珠沙華」
という赤い花があって、
よく似ていて自分では区別がつかない!と思い込んでいました。
彼岸花の別名は、かなりの数!!!です。
それではご一緒に見ていきましょう。
- 死人花(しびとばな)
- 地獄花(じごくばな)
- 幽霊花(ゆうれいばな)
このあたりは「不吉」のイメージにもなっている
『墓に植える花』『彼岸の頃に咲く花』ということと結びつく呼び名でしょうね。
- 毒花(どくばな)
- 痺れ花(しびればな)
毒やー!痺れる…。
彼岸花の持つ毒性が強くイメージづけられる呼び名ですね。
- 天蓋花(てんがいばな)
- 狐花(きつねばな)
これらは彼岸花が咲いている姿からついた呼び名
「天蓋」は祭壇の上を装飾する布のこと。
「狐」は炎を連想させることから、
彼岸花が真っ赤に咲く様子と重ね合わせているようです。
- 曼珠沙華(まんじゅしゃげ/かんじゅしゃか)
少しコワイような別名の多い彼岸花ですが、
コレだけは別!
「マンジュシャゲ」
なら聞いたことのある人も多い…いちばん有名な別名かもしれません。
曼珠沙華はサンスクリット語。
仏教の経典から来ていて、
「天界に咲く花」「めでたい事が起こる兆しが天より降る」という意味をもちます。
ちょっとドキドキ恐ろしい由来の名前たちの中で、やっと縁起の良い別名で、ほっとしてしまいます。
こんなにたくさんある彼岸花の別名。
逆を返せば、それだけ長く多くの人々と共存してきたからこそ、多くの名が付けられたとも言えるかも。
まとめ
- 彼岸花が不吉と言われるのは、「お墓の近く」「彼岸の頃」という死者と近いイメージが多いから。でもけして、彼岸花自体が不幸を呼び寄せるようなことはありません。
- 彼岸花に毒があるのは、本当。体調を崩す恐れもあるので、触るのは良くありません。それでも過去には、毒抜きをして彼岸花を食用としていた時代もあるんです。
- 毒があることで、人々の生活を救ってもきた彼岸花。人間と共存してきたからこそ、今も毎年、たくさんの花を咲かせてくれるんです。
- 少し怖い名前も、素敵な呼び名も。多くの別名は、それだけたくさんの人のそばで咲いてきた証。
不吉な花、毒を持つ物騒な花、というのが一番に連想される彼岸花。
でも、実は知れば知るほど、長く人間と寄り添ってきた、中身の濃い花だと思いませんか?
キレイな花には、毒がある。
強く、美しく咲く彼岸花の姿、今年は少し、違った目線で見ることができるかもしれません。
スポンサーリンク