現代の若い世代では、いまひとつ、「宗教」ってピンときませんよね。
とくに、多くの宗派がある日本の仏教の場合、
「自分の家が、何宗か知らない…」という人は多いかもしれません。
恥ずかしながら、私もつい最近まで知りませんでしたよ…。(ちなみに私の家は、曹洞宗でした)
日本の代表的な宗派は13あります。
今日はその違いを、ざっくりまとめてみましたよ♪
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系統別!13宗派の特徴
まずは、仏教を大きく分けた、系統を知っておきましょう。
- 奈良仏教系…法相宗・律宗・華厳宗
- 密教系 …真言宗
- 密教&法華系…天台宗
- 法華系 …日蓮宗
- 浄土系 …浄土宗・浄土真宗・融通念仏宗・時宗
- 禅系 …臨済宗・曹洞宗・黄檗宗
よく「禅宗」と言われているのを耳にしますが、これはマチガイですよ!
日本には禅宗という宗派はありません。
では、13宗派の特徴などを順に見ていきましょう。
1〜奈良仏教系〜
①法相宗(ほっそうしゅう)
インドの唯識瑜伽行(ゆいしきゆがぎょう)派の系譜を引き、「唯識三年倶舎八年」と言って難解な思想を持ちます。
「無常のこの世で迷える自分自身の心を深く究明していこう」という考え方の宗派ですね。
密教のような『即身成仏』(そくしんじょうぶつ)=『生きたまま仏になること』ではなく、
【長い時間をかけて段階を経て修行を重ね成仏する】と考えます。
また、“ひたすら念仏を唱える”とか“坐禅(ざぜん)をする”などのひとつの行に専念するのでなく、いろんな行を勧めるのも特徴。
- 開祖:中国の基(慈恩大師)
- 本尊:唯識曼荼羅(ゆいしきまんだら)or弥勒菩薩(みろくぼさつ)
- 総本山:興福寺・薬師寺
②華厳宗(けごんしゅう)
「一がそのまま多であり、多がそのまま一である」という、相反するものを一つに統括しようとする考え方を持ちます。
壮大なスケールで、ちょっと哲学的な雰囲気を持つ宗派です。
空海が東大寺の別当になったことがあるため、作法や行事が真言宗に似ているところも。
教典は大方広仏華厳経が中心です。
- 開祖:中国の杜順(とじゅん)
- 本尊:毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)〜太陽のように光明を放つ仏で、迷っている人々を浄土である華厳世界に導く〜
- 総本山:東大寺
③律宗(りっしゅう)
経・律・論の内、律を中心とする宗派。
戒・定・慧の三学でも、定慧は戒に含まれると考えます。
【戒は自己規制=自発的】
【律は集団のルール=他律的】
戒律と言えば一般的には戒より律の方が念頭に置かれますが、律宗では戒に集約されるんですね。
天台宗系統とはまた異なる戒の系譜です。
教典は四分律・梵網経・法華経が中心。
- 開祖:鑑真和上(がんじんわじょう)
- 本尊:盧舎那仏(るしゃなぶつ)
- 総本山:唐招提寺(とうしょうだいじ)〜それまで日本では正式な受戒が不可能であったため、唐から鑑真和上を招き、四分律という戒律を伝えた〜
奈良仏教系は学問宗。ですので、基本的に檀家を持たず、葬式もしないんですよ。
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2〜密教系〜
⑤真言宗(しんごんしゅう)
曼荼羅(まんだら)的な思想が中心とする宗派です。
『十住心論』(じゅうじゅうしんろん)といって、
“人の心のあり方”“価値観”“宗教”…などを10段階に分け、最終段階は大日如来と同レベルに達することを説いています。
「大日如来(だいにちにょらい)がすべての根本で、万物は大日如来と深いかかわり合いを持っている」と考えます。
また真言密教以外の教えは顕教(秘密にせず明らかにした教え)とし、それは真言密教の一部であり、密教に到達するまでの過程とした。
教典は大日経と金剛頂経が中心。
- 開祖:空海(弘法大師)
- 本尊:大日如来
- 総本山:
- 高野山真言宗総本山は高野山金剛峰寺
- 東寺真言宗総本山は教王護国寺(東寺)
- 真言宗智山派総本山は智積院
- 真言宗豊山派総本山は長谷寺
3〜密教&法華系〜
④天台宗(てんだいしゅう)
どの宗派とも違いが少ないのが、特徴の一つと言える宗派。
禅(禅定)・円(法華)・密(密教)・戒(戒律)、どれも大切にする考え方です。(四宗融合と言います)
そのため、天台で学んで宗祖になった人が多いのも特徴です。
人それぞれ縁に応じてどの分野から入っても良しとしており、修行も四種三昧(ししゅざんまい)といって四通りの方法があります。
四種三昧のひとつ、『常行三昧』(じょうぎょうざんまい)の発展した『回峯行』(かいほうぎょう)も特徴。
この修行の内容は3つ!
- 9日間、断食・断水・不眠・不臥の『堂入り行』
- 100日間、山中を60kmを歩く『赤山苦行』
- 100日間、京都市街を巡る『大廻り行』
教典は法華経中心ですが、『朝題目夕念仏』(あさだいもくゆうねんぶつ)といって、
朝は法華経中心、夕方は阿弥陀経中心で勤めます。
- 開祖:最澄(伝教大師)
- 本尊:定め無し〜しいてあげれば(法華経が中心なので)お釈迦様or薬師如来〜
- 総本山:比叡山延暦寺
4〜法華系〜
⑫日蓮宗(にちれんしゅう)
『法華経』(ほけきょう)を最高、最終の経典とし、
永遠の生命を持った「久遠実成の本仏」が姿を表したのが釈尊(しゃくそん)=お釈迦様であるとする宗派です。
「南無妙法蓮華経」(なんみょうほうれんげきょう)と唱える唱題行を行います。
お題目を唱えることは、
“法華経を読む・奉持する・他人に説く・書写する”などと同等の価値があると考えます。
- 開祖:日蓮聖人(にちれんしょうにん)
- 本尊:お釈迦様、大曼荼羅(だいまんだら)、日蓮聖人
- 総本山:久遠寺〜法華宗本門流大本山は本能寺などに分かれる〜
5〜浄土系〜
⑦浄土宗(じょうどしゅう)
修行による成仏は否定し、修行の価値を認めないとしています。
念仏を唱えることは行として勧め、唱えることで極楽往生します。
念仏を唱えることを重視する宗派です。
成仏と往生は区別して考えられ、
【極楽往生の後、極楽浄土で修行して成仏する】と考えられています。
教典は、浄土三部経(無量寿経、観無量寿経、阿弥陀経)で、観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)に重きを置いています。
- 開祖:法然上人(ほうねんしょうにん)
- 本尊:阿弥陀如来(あみだにょらい)〜向かって右に観音様、左に勢至菩薩を祀るのが基本〜
- 総本山:知恩院〜西山浄土宗総本山は粟生光明寺などに分かれる〜
⑧浄土真宗(じょうどしんしゅう)
日本仏教界では最大の宗派です。
【人が求めなくとも仏が救って下さる】という考えが特徴(他力回向の理論)。
「いずれ仏になることが約束されているから、改めて修行する必要はない。
“阿弥陀様が救って下さる”と信じることで往生できる、その感謝の行ないとして念仏を唱える」と考えます。
教典は浄土三部経のうち、無量寿経(むりょうじゅきょう)に重きを置きます。
- 開祖:親鸞聖人(しんらんしょうにん)
- 本尊:阿弥陀様〜理論的には「南無阿弥陀仏」という言葉(名号)〜
- 総本山:浄土真宗本願寺派本山は西本願寺:真宗大谷派本山は東本願寺
⑥融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)
「一人の祈りがすべての人の為になり、すべての人の祈りは自分のためにもなっている」という融通念仏思想に基づく宗派。
毎日百遍の念仏を唱えること(日課念仏)が修行の根幹です。
阿弥陀様の存在が、他の浄土系と異なっていて、密教系の大日如来的な存在と考えます。
教典は華厳経と法華経が中心です。
- 開祖:良忍上人(りょうにんしょうにん)
- 本尊:十一尊天得如来(じゅういっそんてんとくにょらい)
- 総本山:大念仏寺
⑨時宗(じしゅう)
【すでに極楽往生は定まっていると考える点が教えの特徴】の宗派です。
「念仏を唱える時は、心構えや、その結果がどうなるかと言うようなことを心配する必要はない。」
ただ心のままに、何も期待せずに念仏を唱えることを説くこと。日々の生活の中で、一瞬一瞬を臨終と考えること。」
念仏を唱えて往生するのではなく、念仏すなわち往生という考えですね。
教典は阿弥陀経が中心です。
- 開祖:一遍上人(いっぺんしょうにん)
- 本尊:阿弥陀如来or南無阿弥陀仏の書
- 総本山:清浄光寺
6〜禅系〜
⑩臨済宗(りんざいしゅう)
教典や教えに依存せずに相手の心に直接働きかけて、その本質を悟らせます。
あらゆる生命と共存していることに感謝するため、色々な仏様や神様を祀り、すべてのものに仏性を見て礼拝します。
1700余りの祖師の言葉を体得することが悟りの基本。坐禅の座り方は対面形式で行います。
教典は特に定めはありません。
- 開祖:臨済義玄禅師(りんざいぎげんぜんし)
- 本尊:定め無し(お釈迦様が多い)。
- 総本山:臨済宗妙心寺派本山は妙心寺:臨済宗円覚寺派本山は円覚寺
⑪曹洞宗(そうとうしゅう)
坐禅(ざぜん)を修行の基本として修行の威儀作法を重視する宗派です。
「悟りを求めない修行によって悟りを得られる」と考えます。
「悟りを目的とする修行は打算的であり打算的な悟りを生む。悟るまで修行することは、悟ったら修行しなくて良いことになる。悟りへのこだわりはいらない。」という考え方ですね。
坐禅の座り方は、中国以来の面壁。
教典は道元が書いた『正法眼蔵』(しょうぼうげんぞう)が中心。
- 開祖:道元禅師(どうげんぜんし)
- 本尊:お釈迦様
- 総本山:永平寺or総持寺
⑬黄檗宗(おうばくしゅう)
修行形態は臨済宗と同様で儀式の形式や使われる言葉は明時代の様式。
教典は特に定めず、【陀羅尼(だらに)=仏教で用いる呪文の一種】や【阿弥陀経(あみだきょう)=大乗仏教の経典の1つ】も読みます。
念仏を唱えますが、浄土系とはかなり捕らえ方が異なりますね。
南無阿弥陀仏を「ナムオミトフ」と読み、
『般若心経』(はんにゃしんきょう)は唐音で読むのが特徴で「ポゼポロミトシンキン。カンツサイプサ、ヘンシンポゼポゼポロミトス」となります。
最近では他宗と同様に漢音で読む事もあります。
- 開祖:中国の隠元禅師(いんげんぜんし)
- 本尊:お釈迦様
- 総本山:万福寺
なぜ、宗派ってこんなにたくさんあるの?
ここまで見てきた、仏教の代表的な13宗派。
宗派というのはこれだけではなく、さらに多数の派に枝分かれしています。
例えば、浄土真宗の大谷派、本願寺派、真宗高田派…なんていうのは有名ですね。
その派の数は、160以上とも言われています。
仏教というのは、「苦を克服して真の幸せになるための知恵」が説かれているものです。
しかし、幸せになるための思想や解釈って人それぞれ違いますよね?
例えば、「ラーメン道」という、
【ラーメンの基本と、真の美味いラーメンを作るための知恵】を説く教えがあったとします。
そうしたら、
「ラーメンとは麺とスープがある素晴らしい食べ物」という基本の考えは皆同じになりますが、その後、“真の美味いラーメン”を追求する段階になると、
- 「俺はスープを極めるラーメン屋でありたい!」
- 「いや、僕は麺を極めることこそが真のラーメンに近づく道だと思う!」
- 「いいえ私は、豚骨をいかにに毎日仕込むかに人生をかけたい!」
…などなど人それぞれ…
同じ“ラーメン”を追求する中でも、違う道をたどることになると思いませんか?
仏教も、これと同じ。
【幸せになるための思想や解釈の違いによって、現在のように多数の宗派が生まれる】ことになったワケですね。
まとめ
- 日本の仏教の主な宗派は13宗派。
- 法相宗
- 律宗
- 華厳宗
- 真言宗
- 天台宗
- 日蓮宗
- 浄土宗
- 浄土真宗
- 融通念仏宗
- 時宗
- 臨済宗
- 曹洞宗
- 黄檗宗
- 多くの宗派に枝分かれしたのは、幸せになるための思想や解釈が人によって違ったから。
まだまだ奥が深い、日本の仏教。
まずは、「自分の家は、ナニ教の何派なのかな?」というところから、知ってみるのがイチバンです。
その宗派の歴史などを紐解いてみると、なかなか面白いものですよ。
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